君はノンフィクション

来世もオタクがいい

すべてのありふれた光

GRAPEVINEが好きだ。
熱心なファンかというとそうではないのだけど、アルバムは出るたびに買っていて、タイミングが合えばライブにも行く。

思えば自分が中学生のころから好きなバンドだから、もう15年近く聴いてることになる。

1ヶ月半ぶりに来たEXシアターは、私の知ってる姿とだいぶ違った。グッズ売り場はドリンクカウンターだったし、バルコまわりって常設のセットではないんだ、と思い出したし、ミラーボールや壁にLEDもある箱なんだって初めて知った。

その日気温は29度あって、田中も「今年はなかなか秋が来ないね」と歌詞のようなことをMCで話していたけれど、外に出た時の空気はやっぱり秋のそれだった。



GRAPEVINE - 光について (J-WAVE/Hello World studio live)


「光について」という楽曲がある。
GRAPEVINEのなかではキャッチーなほうに入る、人気のある曲だが、聴き始めた15歳の自分には特に思い入れのある曲ではなかった。

就職活動中、わたしはかなり要領の悪い学生だったので、4年の9月になっても就活をしていた。
もう何故志望したかわからないような企業を闇雲に受けて、そして落ちまくっていた。
その日も第何志望かわからない企業の待合室で面接を待っていた。

その時、ほぼ環境音と化した有線のなかから聴こえてきたのが、「光について」だった。

この曲の歌詞のストーリーとしては、すれ違ってしまった恋人たちの曲だが、その時の自分の心情に当てはまりすぎて、面接会場のトイレで泣いた。そしてその企業は普通に落ちた。

音楽に限らず、エンターテイメント全般にたいしてすごいと思うのが、人に大きい影響を与えるわけでなくても、人生の背景になって、折々でそれを思い出させる力があるということだ。
「光について」を聴く度に、なにも手に入れないのに、勝手に何かを失ったような気でいた23歳の自分を思い出すし、EXシアターで聴いた「光について」は15歳の頃の自分も23歳の自分も通り過ぎて、同じこの場所で大事な時間を過ごした自分にはまた違った意味合いを持った。



9月8日の帝国劇場での話をする。
たまたま譲ってもらえたのが9月8日の夜公演で、台風が近づく強風の中、ひとりで入った。
界隈のざわつきは自分の耳にも入っていたけれど、自分自身はそこまでダメージもなく。
けれども、SNSで度を超えたコメントが飛び交う様や、仲のいい友人が戸惑ったり憔悴する姿のほうが、正直自分の精神にはきた。

いつもの現場のような、100%楽しめる気持ちで入ったかというとそうではなかった。
ただ、幕が上がって、新生DREAM BOYSを見た瞬間から、そういった不安な気持ちは払拭された。
エンターテイメントってすごいと、打ちのめさせれた気すらした。

単純に楽しんで、HiHiのバトンミスもなくて、わたしが見る限り、いつも通りのHiHi Jetsで、いつも通りのわたしが好きな人達だった。

DREAMERで5人で手を組んで回るところがあって、作間くんも含めてみんな少し変顔しながら顔を見合わせて笑っていたのが見えた。わたしはそれをみて「ああ、大丈夫だ」と思ったのだ。

なんの根拠もない感想だし、実際その週明けから活動自粛が発表されて、自分の見たものと、状況の剥離になかなか感情がついていかなかった。

わたしは我が強いけれど、メンタルは決して強くなくて、ついついうまくオタクができないときもあるけれども、ただ、あの時自分が見たものを信じていたい。わたしが大切にしたいものは、たぶんステージの上にしかない。


GRAPEVINE - すべてのありふれた光 (Music Video)


EXシアターで聴いた、「すべてのありふれた光」自分にとってまた大切な曲ができたと思えた。
また次聴くとき、違う意味合いを持って聴けたらいいな。